1件目の運営が軌道に乗ったとき、次の物件へ進むべきか迷ってはいませんか。複数物件の運営には、収入が増えるだけでなく、空室や修繕の影響を分散させる効果もあります。ただし、やみくもに増やせば借入れが膨らみ、資金繰りを圧迫しかねません。本記事では、2件目を買うタイミングの見極め方から、融資の積み上げ方、管理の仕組み化、そして拡大を止める判断まで詳しく解説します。
大家が複数物件を持つ意味とタイミング
物件を増やすことは、単に家賃収入を足し算していく作業ではありません。1件のときには見えなかった強みが生まれる一方で、判断を誤れば資金繰りを圧迫する要因にもなります。ここでは、複数所有の意味と、次へ進んでよい時期の見極め方を整理しましょう。
1件目と2件目では何が変わるのか
最も大きく変わるのは、空室が起きたときの揺れ幅です。区分マンションを1室だけ持っている場合、入居者が退去すれば家賃収入はゼロになります。その間もローンの返済は続くため、自分の給与や預金から穴を埋めなければなりません。
これがもう1件増えれば、片方が空いてももう一方の家賃が入ります。収入が完全に止まる事態を避けられるため、精神的な余裕も変わってくるでしょう。
もうひとつの変化が、金融機関からの見られ方です。2件目以降では、本人の年収や勤務先に加えて、これまでの賃貸経営の実績も判断材料に入ります。返済を滞りなく続けてきた記録は、次の融資を受けるうえでの材料になるのです。
複数所有がリスク分散になる理由
不動産投資のリスクは、空室だけではありません。災害、設備の故障、近隣環境の変化、地域の人口減少もあります。どれも1件に集中していると、その物件の事情がそのまま経営全体の成績になりかねません。
たとえば、所有する一棟のアパートが台風の被害を受ければ、その年の収支は大きく崩れます。ところが物件が3件あり、別々の地域に分かれていれば、1件の被害が全体に与える影響は小さく収まるでしょう。
分散の効果は、修繕のタイミングでも働きます。同じ年に建てられた物件ばかりを持っていると、大規模修繕の時期も重なります。築年数をずらして保有していれば、支出の山を分散させられるわけです。
2件目に進んでよい状態の見極め方
では、どの時点で次に進めばよいのでしょうか。判断の材料は3つあります。
ひとつめは、1件目の運営が安定していることです。入居者が決まり、家賃の入金が続き、年間の収支が黒字で回っている状態が、ひとつの目安として1年以上続いているかを確認してください。
ふたつめは、手元資金の余裕です。物件価格の1割から3割の自己資金に加えて、空室や修繕に備えた予備資金も要ります。目安として、家賃収入の半年分ほどを現金で持っておくと、突発的な支出にも対応できます。
みっつめは、1件目の数字を自分で説明できるかどうかです。利回り、返済比率、年間の手取りを把握しないまま次へ進むと、2件目以降の判断も感覚に頼ることになります。
拡大を急ぎすぎた場合に起きること
短期間で物件を増やすと、借入れの総額だけが先に膨らみます。表面上は資産が増えているように見えても、手元に残る現金は細っていく状態です。
危険なのは、空室や修繕が重なったときです。複数の物件で同時に支出が発生すれば、1件あたりの備えが薄いぶん、資金がすぐに底をつきます。返済が滞れば金融機関の信用を失い、その後の融資も受けられなくなるのです。
拡大のスピードは、手元資金が回復する速度に合わせるのが基本になります。買ったあとに預金が元の水準へ戻るまでの期間を見てから、次を検討してください。
規模の拡大と手取りは比例するのか
家賃収入が2倍になれば、手取りも2倍になるとは限りません。所得が増えると、所得税の税率も上がるからです。
日本の所得税は超過累進課税で、課税所得が増えるほど税率が段階的に高くなります。住民税を加えると、課税所得900万円を超えた部分には合わせて43%ほどの負担がかかる計算です。
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税を加えた概算 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 15% |
| 330万円以下 | 10% | 20% |
| 695万円以下 | 20% | 30% |
| 900万円以下 | 23% | 33% |
| 1,800万円以下 | 33% | 43% |
| 4,000万円以下 | 40% | 50% |
| 4,000万円超 | 45% | 55% |
規模を追う前に、増えた収入のうちどれだけが手元に残るのかを確かめておきましょう。この視点が、後ほどふれる法人化の判断にもつながります。
不動産投資を拡大する融資の積み上げ方
このような疑問をお持ちの大家さんはいませんか。
- 1件目は借りられたのに、2件目の審査が通らない
- どの金融機関に相談すればよいのか分からない
- あといくらまで借りられるのか見当がつかない
こうした迷いが生まれるのは、2件目以降の審査では見られる項目が変わるからです。個人の収入だけでなく、すでに持っている物件の成績が判断材料に加わります。ここでは、融資を積み上げるための考え方を順に見ていきましょう。
金融機関が2件目以降で見る指標
2件目以降の審査では、本人の年収や勤務先に加えて、保有物件の収支が確認されます。確定申告書と青色申告決算書を提出し、各物件がどれだけの利益を生んでいるかを示さなければなりません。
赤字の物件がある場合は、その中身も確認されます。減価償却によって帳簿上は赤字でも、手元の現金は残っているケースがあるからです。この場合は、実際のキャッシュフローを資料で説明できるよう準備しておきましょう。
あわせて見られるのが、純資産の状況です。所有する物件の評価額から借入れの残高を差し引いた金額がプラスであれば、財務的に健全だと判断されます。
債務償還年数と返済比率の目安
融資の可否を左右する指標として、債務償還年数と返済比率があります。言葉は難しく聞こえますが、中身は単純です。
債務償還年数は、今の利益のペースで借金を返し切るのに何年かかるかを示す数字です。借入れの総額を、年間の利益と減価償却費を足した金額で割って求めます。借入れが8,000万円、年間の利益が300万円、減価償却費が200万円なら、8,000万円を500万円で割って16年です。おおむね10年から15年以内に収まっていれば、健全な水準とみなされます。
返済比率は、家賃収入に対する返済額の割合です。年間の家賃収入が600万円で返済が300万円なら、返済比率は50%です。この数字が50%を超えると、空室が出たときに資金繰りが苦しくなりやすいといわれています。
いずれも金融機関ごとに基準は異なりますが、自分の数字を把握しておけば、相談の前に借入れの余地を見積もれます。
取引する金融機関を増やしていく考え方
ひとつの金融機関だけで物件を増やし続けるのは難しいのが実情です。同じ相手から借り続けると、融資の総額に上限が見えてくるからです。
都市銀行、地方銀行、信用金庫、日本政策金融公庫では、得意とする物件や地域がそれぞれ異なります。地方銀行や信用金庫は営業エリア内の物件に強く、都市銀行は規模の大きな案件を扱います。自分の物件がどの金融機関の土俵に乗るのかを見極めてから相談してください。
新しい金融機関に相談するときは、物件の資料だけでなく、これまでの運営実績をまとめた資料を持参してください。保有物件の一覧、各物件の収支、返済の履歴をまとめておきます。これらが整理されていれば、初対面でも話が早く進みます。
共同担保を使うときの注意点
すでに持っている物件を担保に入れて、新しい物件の融資を受ける方法が共同担保です。自己資金が足りない場合でも融資を受けられるため、規模を広げる手段として使われます。
ただし、この方法にはリスクがあります。返済が困難になった場合、新しい物件だけでなく、担保に入れた既存の物件にも影響が及ぶからです。1件の失敗が、順調だった物件まで巻き込みかねません。
また、担保に入れた物件は売却しにくくなります。売るには担保を外す必要があり、金融機関の同意が要るからです。出口の自由度が下がる点も踏まえて判断してください。
融資が止まったときに確認すべきこと
審査が通らなくなったときは、まず理由を整理してください。原因は大きく3つに分かれます。
借入れの総額が属性に対して過大になっている場合は、繰上返済で残高を減らすか、1件を売却して身軽になる選択があります。保有物件の収支が悪化している場合は、空室対策や経費の見直しで数字を改善してから再度相談するのが順当です。
金融機関側の方針が変わっているケースもあります。不動産向け融資の姿勢は、市況や行政の指導によって変化するからです。この場合は、別の金融機関に相談すると結果が変わることもあります。
資産を守るポートフォリオの組み方
複数の物件を持つなら、どう組み合わせるかが成績を左右します。同じ条件の物件ばかりをそろえると、同じ理由で同時に傷むからです。ここでは、分散の考え方と、その限界について解説します。
エリアを分けて持つ効果と限界
地域を分けて保有すれば、災害や人口減少の影響を受ける範囲を狭められます。同じ沿線に3件を集中させていると、その路線の価値が下がったとき、全物件がまとめて影響を受けかねません。
一方で、分散にも限界があります。遠方の物件は現地を確認しにくく、管理会社に任せきりになりがちです。何かあったときにすぐ駆けつけられない点は、分散の代償といえます。
現実的なのは、自分が足を運べる範囲でエリアを分ける方法です。日帰りで行ける距離に収めておけば、分散と管理のしやすさを両立できます。
構造と築年数のバランスを取る
木造は法定耐用年数が22年と短く、そのぶん融資期間も限られます。鉄筋コンクリート造は47年と長い反面、価格は高くなりがちです。利回りの水準は構造だけで決まるものではなく、立地や築年数によっても変わってきます。
条件の異なる構造を組み合わせておけば、手元の現金を生む物件と、長く資産価値を保つ物件を同時に持てます。
築年数についても、同じ考え方が当てはまるでしょう。築浅と築古を混ぜておけば、大規模修繕の時期が重ならず、支出の山を均せるのです。
物件タイプを組み合わせる発想
区分マンション、戸建て、一棟アパートは、それぞれ特性が異なります。
区分マンションは、1室単位で買えるため分散しやすく、建物の修繕も管理組合に任せられます。手間は少ないのですが、空室になれば収入は止まり、修繕積立費や管理費を払い続けなければなりません。
戸建てに入居するのは、多くがファミリー層です。一度決まれば、複数年は住んでもらえるでしょう。ただし1戸のみの保有だと、退去されれば収入は途絶えます。
一棟アパートは複数の部屋を持つため、退去されても収入は入ってきます。ただし、空室が増えると経営に悪影響があり、修繕費や管理費が負担になるかもしれません。
このように性格の違う物件ですが、組み合わせることにより弱点を補い合う形がつくれます。
例えば、一棟アパートで毎月の収入の土台をつくり、そこへ区分マンションを1室ずつ買い足していく形です。一棟で空室が出ても区分の家賃が入り、区分が空いても一棟の残りの部屋が収入を支えてくれます。さらに戸建てを加えれば、長く住んでもらえる入居者を抱えるぶん、収入の振れ幅はいっそう小さくなるでしょう。
高利回りと安定性をどう配分するか
地方の高利回り物件だけに偏ると、その地域の賃貸需要が落ちたとき、複数の物件が同時に影響を受けます。都心の低利回り物件だけでは、手元に残る現金が薄くなります。
目安としては、安定して現金を生む物件を土台に置き、その上で高利回り物件を上乗せする形が扱いやすいでしょう。土台が崩れなければ、上乗せ部分で多少の失敗があっても経営は続けられます。
配分に正解はありません。自分がどこまでの変動に耐えられるかを基準に決めてください。
大家として成功する複数物件のキャッシュフロー管理
物件が増えると、お金の流れは一気に複雑になります。全体でいくら残っているかは見えても、どの物件が稼ぎ、どの物件が足を引っ張っているかは分からなくなるのです。ここでは、数字を見える状態に保つ方法を解説します。
物件ごとに数字を分けて把握する
全物件をまとめて集計すると、問題のある物件が黒字の物件に隠れてしまいます。赤字の1件に気づかないまま、数年が過ぎることもあります。
管理する項目は、家賃収入、管理費、修繕費、固定資産税、保険料、ローン返済額などです。物件ごとに並べれば、どこで利益が消えているかが見えてきます。
表計算ソフトで十分です。月ごとに入力していけば、年末には1年分の収支が自動で集計されます。確定申告の作業も早く終わるようになります。
口座の分け方と資金の流れを整える
生活費の口座と不動産の口座が同じだと、どちらの支出か分からなくなります。賃貸経営用の口座をひとつ作り、家賃の入金も経費の支払いもそこに集約してください。
物件ごとに口座を分ける方法もありますが、数が増えると管理が煩雑になります。賃貸経営用の口座をひとつにして、物件別の区分は帳簿で行うほうが現実的でしょう。
その口座には、返済に充てる金額とは別に、修繕用の資金を置いておきます。残高を見れば、使ってよいお金と、手をつけずに残しておくお金を区別できる状態にしておくわけです。
修繕費を計画的に積み立てる仕組み
修繕は、いつか起きることではなく、いずれ来ると決まっている支出です。給湯器もエアコンも外壁も、寿命が来れば交換が必要になります。
積立の目安は、家賃収入の5%から10%です。家賃収入が年600万円なら、年間30万円から60万円を手をつけない資金として確保しておきます。
物件が複数になると、この積立の重みが増します。同じ年に2件の給湯器が壊れることもあるからです。物件ごとに築年数と設備の交換時期を一覧にしておけば、いつどれだけ必要になるかを前もって読めます。
空室が同時に発生した場合の備え
分散していても、空室が重なる時期はあります。3月の退去シーズンに複数の入居者が同時に出ていくことも珍しくありません。
では、いくら持っていれば安心できるのでしょうか。備えとして、全物件が3か月空室になったと仮定し、その間の返済額を計算してみてください。その金額を現金で持っていれば、最悪の事態でも落ち着いて対応できます。
計算してみて足りないと感じたら、それが今の規模の限界を示すサインです。次の物件に進む前に、手元資金を厚くするほうが先になります。
年に一度は全物件を数字で点検する
年に一度、全物件を並べて数字を比べてください。確定申告の時期に合わせると、資料がそろっているぶん手間が減ります。
見るのは、物件ごとの手取り額、返済比率、空室率、修繕費の推移です。前年と比べて悪化している項目があれば、その物件に何が起きているかを確かめます。
数字が下がり続けている物件は、改善するか手放すかの判断が必要です。この点検を続けていれば、売却の時期も感覚ではなく根拠で決められるようになります。
運営を仕組み化して手間を抑える方法
物件が増えてくると、同じ作業の繰り返しが次第に負担になってきます。すべてを自分で抱えていると、本業や生活を圧迫しかねません。ここでは、手間を減らしながら質を保つ方法を考えましょう。
管理会社を一本化するか分けるか
同じエリアに物件が集まっているなら、管理会社を一本化すると連絡の手間が減ります。まとめて委託すれば、管理料の交渉もしやすくなるかもしれません。
エリアが分かれている場合は、それぞれの地域に強い会社に任せるほうが結果は良くなります。地元の入居者の動きや家賃相場を知っている会社のほうが、空室を埋める力が強いからです。
複数の会社と付き合う利点もあります。対応を比べられるため、質の低い会社に気づきやすくなるのです。第8章でふれたとおり、管理の質は入居率に直結します。
同じ対応を繰り返さないための標準化
物件が増えると、入居者からの問い合わせ、退去の立ち会い、リフォームの発注といった同じ種類の判断が、何度も発生するようになります。
そのつど考えるのではなく、対応の基準を決めておいてください。修繕費がいくらまでなら管理会社の判断で進めてよいか、家賃の交渉にはどこまで応じるか。こうした線引きを文書にして管理会社と共有すれば、いちいち相談を受けずに済むはずです。
リフォームの仕様も標準化できます。クロスや床材の品番を決めておけば、毎回選ぶ手間がなくなり、発注も早くなります。
法人化を検討するタイミングと判断材料
規模が大きくなると、法人をつくって物件を保有する形が選択肢に入ります。判断の軸になるのは税率です。
個人の所得税は累進課税で、課税所得が増えるほど税率が上がります。これに対し法人税は、資本金1億円以下の中小法人であれば、年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。地方税を含めた実効税率は、年800万円以下の部分で20%台、超える部分でおおむね30%台前半です。
| 区分 | 税率の考え方 |
|---|---|
| 個人 | 課税所得が増えるほど税率が上がる(住民税を含めて最大55%) |
| 法人 | 年800万円以下は15%、超える部分は23.2% |
所得が増えるほど、法人のほうが税負担を抑えられる場面は出てきます。一般には、課税所得が800万円から900万円を超えるあたりから検討されることが多いようです。ただし有利になる水準は、所得の構成や家族への給与、社会保険の負担によって変わるため、一律の分岐点はありません。法人には設立費用や税理士への報酬、赤字でも納める住民税の均等割も発生します。税額の差だけで決めず、税理士に試算してもらってから判断してください。
なお、不動産の貸付けが事業的規模にあたるかどうかには、貸室がおおむね10室以上、または独立家屋がおおむね5棟以上という目安が使われます。いわゆる5棟10室基準です。事業的規模になると税制上の扱いが変わりますが、青色申告特別控除の65万円を受けるには、記帳の方法や申告の仕方など別の要件もそろえる必要があります。
自分が動かなくても回る体制をつくる
目指したいのは、自分が1か月不在でも家賃が入り続ける状態です。そのためには、判断を任せられる相手と、任せる範囲を決めておく必要があります。
管理会社には日常の対応を、税理士には申告を、リフォーム業者には工事の提案をお願いしましょう。それぞれに役割を渡したうえで、自分は月に一度の報告を確認し、大きな判断だけを下す形にします。
この体制ができれば、物件が増えても自分の作業時間は増えにくくなるでしょう。規模を追うなら、仕組みを先につくっておくことが前提になります。
不動産投資で拡大を止める判断
増やし続けることが正解とは限りません。どこかで拡大を止め、守りに入る時期が来ます。その切り替えを誤ると、それまで積み上げた資産を失いかねないのです。ここでは、止めどきを見極める材料を挙げます。
借入れが過大になっているサイン
危険の兆候は、数字と実感の両方に表れます。
数字で見るなら、返済比率、債務償還年数、手元の現金の3つに警戒ラインを決めておきましょう。返済比率が60%を超えた、債務償還年数が20年を上回った、手元の現金が年間返済額を下回ったといった水準を自分の線として引いておけば、どこから危ないのかを迷わずに判断できます。
実感としては、修繕の判断をためらうようになったときが危険の合図です。必要な工事を費用の都合で先送りし始めると、物件の質が落ち、空室が増え、収入がさらに減る悪循環に入ります。
金利が上がった場合に受ける影響
変動金利で借りている場合、金利の上昇は返済額に直結します。借入総額が大きいほど、その影響も大きくなります。
借入れが1億円、返済期間30年、元利均等返済で試算してみましょう。
| 金利 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
|---|---|---|
| 1.0% | 約32万2,000円 | 約386万円 |
| 1.5% | 約34万5,000円 | 約414万円 |
| 2.0% | 約37万円 | 約444万円 |
金利が1%上がるだけで、年間の負担は58万円ほど増える計算です。家賃収入は自動では増えませんから、この差額はそのまま手取りから消えます。
拡大を考えるときは、今の金利だけで判断しないことが大切です。金利が上がった場合の返済額も試算し、それでも返済を続けられるかを確かめてください。
増やす時期と守る時期を分ける考え方
資産形成には、積み上げる局面と、守る局面があります。では、どこで切り替えればよいのでしょうか。
判断の軸になるのは、年齢と目的です。収入を増やす段階なら借入れを使って規模を追い、安定を求める段階なら返済を進めて借入れを減らしていきます。この切り替えを意識して行うことが大切です。
上限を決めておくのもひとつの方法です。保有件数、年齢、借入残高のいずれかで自分なりの線を引いておけば、勢いで買い増してしまう事態を避けられます。
拡大の終わりと出口戦略をつなぐ
拡大を止めたあとは、保有する物件をどう整理していくかという話になります。第10章でふれた出口戦略が、ここで効いてくるのです。
複数物件を持っている場合、売る順番にも意味があります。収益性の低い物件から手放して借入れを減らす方法もあれば、利益の出る物件と赤字の物件を同じ年に売って税負担を抑える方法もあります。
増やす計画と同じように、減らす計画も立ててください。どちらも決めてはじめて、資産形成はひとつの流れとして完成します。
まとめ
複数物件の運営は、組み合わせ方しだいで空室や修繕の影響を分散できます。積み上げた運営の実績は、次の融資を相談するときの材料にもなるのです。ただし拡大のスピードは、手元資金が回復する速度に合わせることが前提です。融資を積み上げるには債務償還年数や返済比率といった自分の数字を把握し、取引する金融機関も広げていきましょう。物件ごとに収支を分けて管理し、修繕費を積み立て、対応を標準化すれば、規模が増えても手間は抑えられます。そして増やす時期と守る時期を分け、金利が上がっても返済を続けられるかを基準に、拡大の止めどきを見極めてください。
参考サイト
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm

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